宮大工
柱建て
飛鳥工務店
法多山尊永寺
愛染堂
棟梁あいさつ
尊永寺様が開創1300年を迎える記念事業として、ふさわしい御堂にするべく考案して
いく中で、法多山が開創した奈良時代の建造物や仏様の造りを調べていくうちに、令和の職人が「古代に挑戦」するような熱い感覚になりました。
これは100年に一度の大勝負。宮大工として今まで培ってきた技法、知識、共感してくれる仲間で、細部にも拘り、
職人技を余すことなく出し尽し、一丸となり施工にあたり、この世に生み出す感覚で仕上げましたので、是非ご覧ください!こうした歴史的事業を私共に託してくれた法多山尊永寺現住職様には心から御礼申し上げます。 飛鳥棟梁
愛染堂とは
日頃から多くの人々に愛されているお寺に相応しい天弓愛染明王様を、1300年前(奈良時代)の工法、乾漆技法で制作し、中央に安置して頂くことを軸に据え、360°拝むことができる八角堂を愛染堂と名付けました。八角堂を造るにあたり手に入る資料がほとんどなく、法隆寺の国宝夢殿に幾度と出向き見つめては、自分なりに研究し木組やバランスを何度も考え、規模的には30%程小さくしましたが、古代感を感じられる骨太い設計にしました。
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愛染堂は伝統的な建物として佇んでおりますが、実は古典的な部分と現代の手法も織り交ぜて納まっていまして、業種に分けて説明させて頂きます。
○地業については地盤調査の結果、強弱のムラがあった為、荷重を計算後、鋼管杭を採用し安全地盤の確保をしました。加えて裏山からの水が多く湿気対策と崖対策に擁壁を兼ね備えた高基礎としました。
○基壇については、夢殿を手本に日本の社寺建築でも数少ない二重基壇を御影石で組み上げました。
○木部の構造的な観点では、伝統工法を主体に考え、現代の建築基準法を当てはめる設計になっております。
○瓦については、それぞれの鬼が意味合いを持った顔になっており、現代のゲリラ豪雨に対応できるように、特注で長い瓦を差し込み本瓦葺きとし、地震時に瓦がズレないよう引っ掛け桟空葺き工法で施工しました。
そうすることで昔のように土を使用しないため、軽量化された現代工法の屋根になっています。
○塗装については、柱上部の斗組の間に嵌め込まれている板に、現代の車の塗装で使用される塗料で施工。
ですが、単純な白では青み掛かっている為、実際の漆喰に見えるよう色を調合し、違和感の無いように仕上げてあります。これは将来的にメンテナンスが困難な場所に採用しました。
○左官については、柱と柱の間の壁に、砂漆喰下地2回塗り+本漆喰となっており、地震時に亀裂が入ってもメンテナンスできる工法となっています。また床面も石張りの為、結露対策として、調湿効果が期待できるよう自然素材で仕上げてあります。
○外部の連子格子には防火防雨対策の為、裏面に板金を仕込んであります。重厚な外扉は桧厚板に金具、
サラッと見える内建具も外部連子格子の高さに合わせて、通常よりも比率を変えてあることと、内外どちらからも同じ見え方になるよう、両面細工になっています。さらに内部の菱欄間からは、内側の間接照明が零れるよう角度を起こし気味に考えました。
○天井は夜空や宇宙を連想させるよう弓型になっており、表面に青漆と螺鈿(貝殻の裏のキラキラ)を散りばめ、中心部にはエネルギーの集合体を津軽漆器の技法を用いて、物体が発生する様を表現。更には天弓愛染明王様を奈良時代の製作技法(乾漆像)とし、その矢が放たれた様を放射天蓋で表現しました。
○設備については、SECOM警備を無線機器で設置しカメラには録画機能を備え、長押にLED照明を仕込むことで間接的な光で調光できるようになっております。火災報知器や配線、コンセントは極力隠れるよう配置し、堂内のしつらえに不自然にならぬよう気を配りました。
このようにあらゆる場面で、現代での工法、古典的な工法を検討し融合させ、立地環境、異常気象も視野に入れた対策と、将来的なメンテナンス面の考慮、伝統的手法での挑戦的工芸の数々、現代環境設備を兼ね備えた御堂となっています。
棟梁あいさつ
尊永寺様が開創1300年を迎える記念事業として、ふさわしい御堂にするべく考案して
いく中で、法多山が開創した奈良時代の建造物や仏様の造りを調べていくうちに、令和の職人が「古代に挑戦」するような熱い感覚になりました。
これは100年に一度の大勝負。宮大工として今まで培ってきた技法、知識、共感してくれる仲間で、細部にも拘り、
職人技を余すことなく出し尽し、一丸となり施工にあたり、この世に生み出す感覚で仕上げましたので、是非ご覧ください!こうした歴史的事業を私共に託してくれた法多山尊永寺現住職様には心から御礼申し上げます。
飛鳥棟梁
愛染堂とは
日頃から多くの人々に愛されているお寺に相応しい天弓愛染明王様を、1300年前(奈良時代)の工法、乾漆技法で制作し、中央に安置して頂くことを軸に据え、360°拝むことができる八角堂を愛染堂と名付けました。八角堂を造るにあたり手に入る資料がほとんどなく、法隆寺の国宝夢殿に幾度と出向き見つめては、自分なりに研究し木組やバランスを何度も考え、規模的には30%程小さくしましたが、古代感を感じられる骨太い設計にしました。
材木については、荷重が掛る構造部分にケヤキを使用し、木目合わせに大変苦労
しました。尊永寺様の境内に自生していた杉を数年間預かり乾燥させて、開口柱や長押、格子、8本の隅木の要になる芯束に使用。永い間参道に立ち私達の先祖が参拝してるのを見守り、暴風を防いでくれた木が、新たな御堂の骨組の役目として戻せた事が大工としてとても嬉しく思います。
屋根の鬼瓦には八方を、(子孫繁栄・結婚・息災延命・欲・蘇り・妬み・憤り・浄化)と、人間のあり方をそれぞれ顔で表し、愛染様に人々が願う種類を表現してます。
堂内の装飾には、須弥壇が鏡面に磨き上がり、北側には蘇りを意味した鳳凰が光背を
支え、鮮やかな蓮台に憤怒した天弓愛染明王様がお座りになり、皆様の心願を天に
向かって弓を番える姿。天井には弓が放たれた心願の放射を現した天蓋があり、その奥には夜空や宇宙空間を螺鈿と青漆で現すことで、丸柱を境に「俗世間」と「仏世界」を体現してもらえる異空間を伝統技法で表現。
このように堂内中央に様々な心願が集まり、それらが成就するかの如く、瓦屋根の
頂点に夢殿型露盤宝珠によって天に放出する様を表現した造りになっており、内部外部、どこを見ても職人技が光る見所満載の御堂となっています。