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仏具

須弥壇

高田仏具店

​法多山尊永寺

​愛染堂

職人技の融合と装飾 愛染堂を彩る伝統工芸と現代装飾

 

日本国内の作例がとても少なく、それも日本初の乾漆技法の天弓愛染明王をお祀りする佛具を荘厳するにあたり、やはり特別な須弥壇、天蓋、屋根の製作依頼を頂きました。

 

須弥壇は八角堂の中心に据えることになりますので、やはり形状は八角形での製作になりました。普通、須弥壇は四角形の形状が殆どで、しかも八本の柱に囲まれた中央の欅台に据えなければならないので、通常の工法では塗装も納入も不可能でした。解体して納入し、囲まれた柱の内側での組み上げ作業を念頭に、製作計画を立案しました。

天弓愛染明王を支える土台となるので、強度も不可欠となります。そこで接着剤などを使わず、八角形を固定する為に、伝統工法である車知締め工法を採用しました。

各部材を固めずに木工事、塗装作業を行うので、いざ納入の際に板が反ったり、部材が動いたりしていると、隙間やズレが出て、綺麗に形が決まりません。そこで、材料の杢目、反り、乾燥状態などをしっかりと吟味し、おおまかに木取りをした後、半年間乾燥させました。框は車知締めの荒削り、乾燥後に反りを出してから正寸加工。反りや引きを止める為の塗料塗りなどを行いました。

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職人技の融合と装飾 愛染堂を彩る伝統工芸と現代装飾

 

日本国内の作例がとても少なく、それも日本初の乾漆技法の天弓愛染明王をお祀りする佛具を荘厳するにあたり、やはり特別な須弥壇、天蓋、屋根の製作依頼を頂きました。

 

須弥壇は八角堂の中心に据えることになりますので、やはり形状は八角形での製作になりました。普通、須弥壇は四角形の形状が殆どで、しかも八本の柱に囲まれた中央の欅台に据えなければならないので、通常の工法では塗装も納入も不可能でした。解体して納入し、囲まれた柱の内側での組み上げ作業を念頭に、製作計画を立案しました。

天弓愛染明王を支える土台となるので、強度も不可欠となります。そこで接着剤などを使わず、八角形を固定する為に、伝統工法である車知締め工法を採用しました。

各部材を固めずに木工事、塗装作業を行うので、いざ納入の際に板が反ったり、部材が動いたりしていると、隙間やズレが出て、綺麗に形が決まりません。そこで、材料の杢目、反り、乾燥状態などをしっかりと吟味し、おおまかに木取りをした後、半年間乾燥させました。框は車知締めの荒削り、乾燥後に反りを出してから正寸加工。反りや引きを止める為の塗料塗りなどを行いました。


格狭間や裏板、天場板も通常は合板を使いますが、今回は棟梁の強いこだわりによりムクの木材を使いました。反りが出にくい材料吟味、粗取りにて各材料の癖を出し正寸加工の後、接合部の開き止め加工を行いました。天場板も隙間が出ないように四方をフローリング加工しました。

塗装工程は各部材を解体して作業できるので通常よりも丹念に塗り、研磨作業ができました。塗りは表面を鏡面に磨き上げるので、下地塗りが悪いと磨いても凹凸があったり、ムラになります。下地塗りを何度も行い、丁寧に研磨することによって、その後の中塗り、上塗りが綺麗に塗り重ねられ、塗りの厚みを増していき、表面を研磨し鏡面仕上げをいたました。

現場での組み上げ作業の後、框の角や柱に錺金具を打ちます。今回は法隆寺の夢殿を彷彿する八角の御堂であったため、様々な唐草文様がある中で法隆寺玉虫の厨子に使われている「忍冬唐草」をアレンジしたデザインにしました。

銅の地板に透かしを施し、楔(くさび)文様を一打一打、鏨と金槌で連続して描きながら彫り進めていく蹴り彫りという技法で紋様を表現しています。八角堂の垂木や長押にも、このデザインの錺金具が装飾されています。

 

 天蓋と屋根は、経典の中の『衆星の光を射るが如し』と記されている箇所を具現化する為に、屋根には螺鈿塗りを施しました。通常の螺鈿塗りは細かく砕いた貝の粒を黒漆を塗り重ねて磨き上げますが、今回はより美しい星空を表現するために、藍色の漆を使いました。藍漆を七回ほど、貝の粒がうまるまで塗り重ねますが、漆は乾く際に元の色よりも黒めいて乾きます。その為、屋根のカーブとも相まって、研磨していくと同じ藍漆でも各層の漆が段々と研ぎ出されてくるので、微妙に色合いが変化して奥行きが生まれ、本物の星雲のような風合いに仕上がりました。

天蓋は射られた星が四方八方に流星のごとく飛んでいくイメージでの製作となりました。この様な天蓋は過去に作例がなく、デザインから行いました。仏像の光背に用いられる放射状光背からアイデアを得て、流星を思わせるモダンなイメージになるように形状や各部材の厚みなどを試行して、何度も原寸図や模型を製作し、仏師と木地師と彫刻師の連携により原型が完成し、漆塗り、金箔押しを経て、今までに類を見ない天弓愛染明王のための天蓋が完成しました。

 

天弓愛染明王を祀るこれらの荘厳佛具は一人、一職種の職にだけでは製作できません。木地師、塗り師、彫刻師、箔置き師、錺師などたくさんの職人たちが次の職人たちへ技術と情熱の襷を繋いでいって、より素晴らしい荘厳佛具となります。

愛染堂荘厳佛具製作のおかげで、関わった職人たちも新たな感性を磨くことができ、更なる技術の向上ができたと思います。今回の記念事業に携わらせていただいた事を誇りに思い、次への励みとしていきたいと思います。このような素晴らしい機会を与えて頂きました法多山御住職様に改めて深く感謝申し上げます。


高田仏具店

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